研究テーマ:ターボ高過給ガソリンエンジンの燃焼と過給システムの研究開発
ダウンサイジングガソリンエンジンの過給域における燃費を改善するため,ミラーサイクルとLPEGR(低圧排気再循環)の効果と,オイル添加剤が高過給域の低速プレイグニッション(LSPI)に与える影響を確認しました.
可変ジオメトリー(VG)ターボによる2段過給システムを備えた4気筒エンジンを用いた実験の結果,1750rpm,BMEP=2.7MPaの運転条件で正味熱効率が34%を超える運転を実現しました.
↓目的 ↓期間 ↓参加企業 ↓背景 ↓内容 ↓成果 ↓論文発表
目的
- 超高過給エンジンの過給域燃費改善
- 高過給域でのプレイグ発生のメカニズム解明
期間
2016年5月~2019年3月(2年11ヶ月間)
参加企業
正会員:16社
賛助会員:4社
(自動車会社,サプライヤ,計測器メーカ,ソフトウェアベンダ)
背景
ガソリンエンジンのダウンサイジングコンセプトとは,NAエンジンを過給エンジンに置き換え,排気量減少による摩擦損失低減と,相対的に中高負荷領域を使用することによる低燃費率領域の運転で実用燃費を改善する技術である.
過給をさらに増大させ,負荷域を広げられれば,排気量をさらに減少させることが可能となり,この技術の効果が高くなる.
これまでの研究では,低速で過給を高めていくと,低速プレイグニッションが発生し,エンジンが損傷するなど問題があり,そのメカニズム解明と発生の抑止が課題となっている.
内容
目標と達成方法
目的 | 目標 | 達成方法 |
---|---|---|
過給域燃費改善 | BMEP 3MPa全負荷直近まで最良燃費率 | ・圧縮比の上昇(9.5超) ・ミラーサイクル,LPEGRによるノック回避 ・ガス流動強化,混合気圧縮端温度制御,点火の強化 ・高過給超ミラーによる正のポンプ仕事 |
高過給域のプレイグ解明 | BMEP 2-3MPaにおける発生状況の把握,影響因子の分析,オイル添加剤影響の確認 | ・ミラーサイクル,LPEGRの効果確認 ・Caに代わるオイル添加剤の評価 |
実験と計測
- 単気筒エンジンによる高過給域の燃費率確認,LPEGR,ミラーサイクルの効果確認
- 試作4気筒エンジンによる試験
- ターボ2基を使用した2段過給
- オイル添加剤の評価
シミュレーション
- 1D:性能予測
- 3D:ガス流動,混合気形成,燃焼予測と改善案の検討と提案
技術ミーティング
2か月毎に開催し、自動車メーカ、サプライヤ、大学研究者が活発な技術交流を実施
成果
参加企業様には,参加資格に応じて研究成果報告書や詳細技術資料などを提供しました.
COMODIA等で論文発表を行いました.
2段過給システムの開発
ミラーサイクルとLPEGRの効果
オイル添加剤がLSPIに与える影響
高過給時の熱収支
論文発表
タイトルにリンク先があるものは,無料で全文をダウンロードできます.
- 森川 弘二,沈 冨超,山田 敏生,森吉泰生,窪山 達也,Investigation of LSPI and Improvement of Fuel Economy in Super-highly Boosted Gasoline Engine,The 10th International Conference on Modeling and Diagnostics for Advanced Engine Systems (COMODIA 2022), A1-2,July 5-8, 2022
- 森川 弘二,沈 冨超,山田 敏生,森吉泰生,窪山 達也,超高過給ダウンサイジングコンセプトによる運転可能負荷領域と低燃費率領域の拡大,自動車技術会論文集2020 年51巻5号 p. 862-868
- 沈 冨超,森川 弘二,森吉泰生,窪山 達也,超高負荷運転におけるオイル添加剤がLSPI発生に与える影響,自動車技術会論文集2020年51巻3号 p. 517-524
- 山田 敏生,滝澤 勇太,森川 弘二,沈 富超,森吉 泰生,窪山 達也,超高過給域でのポンプ仕事回収を狙った2段過給システムの検討,自動車技術会論文集2020年51巻6号 p. 1031-1036