研究テーマ:ターボ高過給ガソリンエンジンの燃焼と過給システムの研究開発
ガソリンエンジンのダウンサイジングコンセプトの限界を高めるため,障害となる低速プレイグニッション(LSPI)の現象把握,解析を行いました.
実機による実験の結果,エンジン冷却水温,燃料噴射時期,オイル添加物の影響が判明しました.これらの影響を考慮してLSPIの発生を抑えることで,4気筒正味平均有効圧力換算で約3MPa/1500rpmの超高過給運転を実現しました.
↓目的 ↓期間 ↓参加企業 ↓背景 ↓内容 ↓成果 ↓論文発表
目的
- BMEP3.2MPa以上のターボ過給ガソリンエンジンの燃焼と過給システムの実現
- 低速プレイグニッション(LSPI)現象の解明と対策、ノッキングの抑制方法の提案
- 過給システムの課題とその解決法の提案
- 最適なシステムの提案と設計手法の確立
期間
2011年7月1日~2014年3月31日(2年9ヶ月間)
参加企業
- 自動車メーカ:5社
- サプライヤー:7社
- 計測器メーカ:6社
- ソフトウエアベンダ:2社
背景
ガソリンエンジンのダウンサイジングコンセプトとは,NAエンジンを過給エンジンに置き換え,排気量減少による摩擦損失低減と,相対的に中高負荷領域を使用することによる低燃費率領域の運転で実用燃費を改善する技術である.
過給をさらに増大させ,負荷域を広げられれば,排気量をさらに減少させることが可能となり,この技術の効果が高くなる.
これまでの研究では,低速で過給を高めていくと,低速プレイグニッションが発生し,エンジンが損傷するなど問題があり,そのメカニズム解明と発生の抑止が課題となっている.
内容
研究対象
- 4気筒直噴高過給ガソリンエンジン 全気筒の性能解析(詳細解析は特定の気筒)
- 低回転高負荷時のプレイグニッション解析,低回転高負荷および高回転高負荷時のノッキング解析
- 上記課題対策としてのクールドEGR、リーンバーン他の燃焼技術の応用
- 上記課題対策に関連して、過給機への要求と新過給システムの検討
実験と計測
- パラメータ:回転数、負荷、過給圧、当量比、EGR率、給気温度、冷却水温度、燃焼室壁温、オイル温度
- 計測項目:正味/図示有効圧力、熱効率、燃料流量、空気流量、A/F、G/F、デポ厚み、排気成分、吸気/筒内/排気圧力、筒内局所可視化、局所ガス濃度/温度計測過給機の作動計測(過渡応答性を含む)
- 総合評価:JC08モード運転相当
シミュレーション
- 1D:過給 (過渡応答を含む) 自着火シミュレーション
- 3D:ポートから燃焼室の流動,噴霧解析と自着火シミュレーション
- 化学反応を含む多領域燃焼解析による火炎伝播燃焼と自着火シミュレーション
- 燃焼室壁の冷却性シミュレーション
技術ミーティング
2か月毎に開催し、自動車メーカ、サプライヤ、大学研究者が活発な技術交流を実施
成果
参加企業様には,参加資格に応じて研究成果報告書や詳細技術資料などを提供しました.
内燃機関シンポジウム等で論文発表を行いました.
LSPIの現象把握
可視化によるLSPIの機構解明
超高過給運転の実現
論文発表
- Investigation and Improvement of LSPI Phenomena and Study of Combustion Strategy in Highly Boosted SI Combustion in Low Speed Range, SAE Technical Paper 2015-01-0756
- ダウンサイジングコンセプトの限界を向上させるための超高過給ガソリンエンジンの研究(第一報 LSPIの現象把握・解析・回避と高BMEPの達成),第25回内燃機関シンポジウム(2014)
- ダウンサイジングコンセプトの限界を向上させるための超高過給ガソリンエンジンの研究(第二報 数値解析によるLSPIメカニズムの定量的検討とCaO説の提起),第25回内燃機関シンポジウム(2014)
- ダウンサイジングコンセプトの限界を向上させるための超高過給ガソリンエンジンの研究(第三報 可視化実験によるLSPIメカニズムの解明),第25回内燃機関シンポジウム(2014)